日本の糖尿病患者数は700万人以上で、その予備軍を含めると1,600万~2,000万人にのぼると言われ、今や国民病の一つと言っても過言ではない状 況となっています。一方、日本糖尿病学会が認定する糖尿病専門医は約3,000人程度ですので、専門医が全ての人を診るのは不可能です。したがって多くの 糖尿病患者様の診療は、我々一般内科医が担うことになります。
そんな中、実際、糖尿病の傾向あるいは糖尿病と診断された方でも、その病態をきちんと理解されている方は多くはないように思われます。
糖尿病は、インスリン作用不足により生じる慢性高血糖を主徴とする代謝疾患群であり、膵臓からのインスリン分泌の低下によっても、また組織(筋肉・肝・ 脂肪)におけるインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)によっても、また両者が種々の程度加わっても生じます。血糖値はこの代謝異常の程度を反映する 鋭敏な指標となります。しかし、実際は糖代謝のみならず、脂質代謝、蛋白代謝にも各種の異常をきたします。その結果、糖尿病に特有な細小血管障害が生じ、 視力障害、時には失明・腎不全(最終的に透析)・痺れ感や疼痛・下肢の壊疽(ひどい場合切断)などの重大な病態に至ることがあります。さらに、糖尿病は全 身の動脈硬化症を促進し、最終的には心筋梗塞・脳梗塞などの重大な合併症をひき起こす可能性があります。一方、著しい高血糖で口渇・多飲・多尿・体重減少 などがみられ、意識障害・昏睡などの急性合併症もみられます。また、免疫能低下も引き起こすため、細菌性肺炎、肺結核、腎盂腎炎などの感染症も合併しやす くなります。
健診等で糖尿病の可能性を指摘された初期のうちでも、これらの病状の早い進行を防ぐための意識改革(生活習慣改善)と通院が大変重要となります。
2008.2.28
消化器内科 車川 寿一