冬期にはいくつかの皮膚トラブルが起こりやすくなりますが、最もよく見られるのは乾燥による皮膚病でしょう。冬期は空気が乾燥しがちであるため、皮膚の水分が失われて腰や下腿(すね)のあたりが白く粉をふいて、カサカサして荒れた状態になり、湿疹(しっしん)が起こりやすくなります。特にアトピー体質の人や高齢者に多く見られます。 本来、皮膚には保湿成分が存在し乾燥を防いでいるのですが、アトピー体質の人や高齢者の皮膚にはこの保湿成分が不足しているため、皮膚乾燥を生じやすくなると考えられています。乾燥して荒れた状態の皮膚は、下着や衣類の擦れ、引っ掻いたり擦ったりといった外的刺激に対して敏感に反応し、赤くなったりジクジクしたりといった湿疹性の変化が起こります。
治療としては、ステロイド外用剤の塗布が最も有効ですが、かゆみが強い場合は抗ヒスタミン剤の内服を併用します。症状軽快後は保湿剤の外用を続けることで再発を防げます。乾燥性の湿疹を生じやすい人は空気が乾燥し始める頃から保湿剤を外用し、皮膚乾燥を予防するのが良いでしょう。 他によく見られる冬の皮膚トラブルとしては、凍瘡(しもやけ)があります。気温が4~5℃で1日の温度差が10℃以上あると、起こりやすくなると考えられています。
治療の主体はビタミンEの内服、外用ですが、時に漢方薬の内服やステロイド外用剤の使用が有効なこともあります。暖房やカイロなどの使用により保温に努め、濡れた手足は早めに拭いて、湿りっぱなしにならないように気を付けると良いでしょう。
2013.11.15
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
牧野 孝文